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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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「あーちゃん」
「なんですか」
 彼女は、焼けたフライパンをテーブルの上に無造作に置いた。ガラス製のテーブルはカチンと耳を砕くような音を鳴らした。割れそうだ。
「あーちゃん」
 もう一度、彼女の不正確な名前を呼んだ。
 この名前を呼ぶたびに、あの頃の薄暗い思い出が記憶から溢れでてくるような気がする。
「へーくん」
 あーちゃんが、おれの不正確な名前を呼んだ。
 そしてこの名前を聞く度に、やっぱり同じように気分が悪くなる。世界の全てから千回ずつ打ちのめされたような感じの、あの気分だ。
 それでもまだおれはこの名前を捨て切れない。
 あーちゃんが、その大きな二つの目で、おれをのぞき込んでいる。
 おれは、その体液に濡れた目の、電灯の写り込んだ光をのぞき返した。
 お互いの正確でない名前を呼び合って、そして見つめ合った。まるで恋人同士のように。
 彼女の薄く開いた唇の隙間から生暖かい酸素が吐き出されている。
 頬を赤らめた。幸せそうだ。彼女は。本当かな。
 言葉が出ない。
 見つめ合っている。彼女の体温がそのまま伝わってくるような距離で、でも、おれの手は、決して彼女の触れないようにと緊張している。ソファの柔肌に両手をめり込ませて、ほんの数センチの最短距離を踏み切れない。
 本当に彼女は幸せなんだろうか?
 今、こうして見つめ合っていて。君は笑っているけど。

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