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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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「裏切るって? おれが?」
「警察にタレコミやがりますと」
「何を」
「ん」
 あーちゃんは、ちょっと視線を外して考え込んだ。誘導尋問。下手くそだな、ぜんぜん偽装できてない。
「ご存知のようなあれです」
「明言を避ける。やましいところがあるからだ」
「それはもう」
「誰も知らないと思っている」
「いいえ、私は物覚えがいい方です。ご存じないかも?」
 あーちゃんは右の人差し指を、俺の喉元にぴっと突き立て、続けた。「たとえあなたの証言があったとしても」、と。
「現行犯にはなりませんが、探せばいくらでも証拠は出るでしょう。誰の犯行ですか? 私は、そんなにちゃんと始末をしていません。過去のスプリー・キラーのようには。燃やす場所もない。コンクリートや薬品は一女子高生には手に入れられない。お料理には」
 机の上のフライパンが目に入った。
 あーちゃんは笑っていた。
「食べちゃったら、人目につく所に遺棄できないです」
「そ、う」
 そうだな、と言おうとしたが、声が上手く出なかった。
 変に喉が渇いた。カラカラで、少し痛かった。
「ですので私の身柄はへーくんに託されているのです」
「通報するべきか、目をつむるべきか」
「ですです」
 どうしてそんなことを言うのかな、と、思った。おれが裏切ると思っているのかな。へーくんなのに。そうでないとしても。
「逮捕されたら私はおしまいです。なにもかも」
「わかってるよ」
「へーくんが思っている以上に、多分悪い結果になりますよ。きっと」
「わかってる」
「ん?」
 首を傾げた。
「何回も同じ事、言わなくたっていいだろう。わかってるんだ。おれは、それだけは嫌だ」
 それ、というのが、何を代替しているのか?
 広い範囲の考え得るあらゆる悲観。
 何かしらの救いを求めている。未来、なんとか平穏無事に過ごせればいいな、と。
 その反対側にあるあらゆるもの全てが、嫌だ。
 あーちゃんが、泣いたように、ぎゅっと目をつむった。すぐに開いた。笑った。
 再開して以降、始めて見たような顔をした。

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