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 まあ、その時は、死んじゃいなかったので、どうでもいい人間ではなかった。従って、色々言いたいことがあったが、言葉がなかった。こいつと話が通じると思っていなかった。あらゆる意味で。
 その時、おれの考えていたのは三つ。
 これで、殺せるのか、と。
 これが、新しい遊びか、と。
 それから、殺さずに切り抜けるにはどうしたらいいか、と。
 おれは全く自分のことしか考えていない。この頃からずっとそうだ。
 犯人は動き出さないおれにものの数秒でしびれを切らし、包丁を握らせた手を、その上から掴んだ。体温の高い手のひらが、妙に優しく包み込んだ。こんなに滑稽なことはない。腹の中に耐え難いざわざわした感情が湧いていた。笑いを堪えるのに必死だった。訳もなく? 訳も判らず。
 今ならその可笑しさも説明できるけど。
「どうして」
 と、犯人は優しく耳元で囁いた。
「どうしてできないの?」
 と、優しく言う。
 おれはまだ犯人の顔を見上げていた。相変わらず言葉が出ない。こいつのために言葉を組み立てるのが億劫だった。
「使い方が判らない? 教えたはずでしょ? こうするの」
 と、優しい声で言った。それを聞き終わるよりも前に、左手の真ん中を、激しい熱さが貫いた。
 あ、と思った。血が飛び散った。痛くはなかった。熱かった。
 右手に握らされた包丁の先が、おれの左手の甲を貫いていた。犯人の手の平の内側の、痺れる程の強さで握られた、蒼白な左手の、内側の凶器が。
 耳をつんざくような幼い叫び声が鳴り響いた。
 おれじゃない。叫ぶほどは痛くはなかった。
 犯人は、血走った目をおれから背けた。悲鳴の方向を探した。
 おれは右手を押さえてうずくまった。痛くはない。ただ、痛い、と呻いた。嘘だった。これで犯人が興味をなくすだろうと思ったのだ。


これここの犯人は女性なんですけど、それはしばらく隠そうと思って曖昧に書いていたんですが
曖昧にする意味も特にないような気がしてきた
どうでもいいことを意味深で書いてるから話が進まない、と、そういう気がしてきた

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