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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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「久々知君、君は」
「はい」
「友達一人しかいないの?」
「友達」
 おれは勘右衛門を指さした。
「いや、二人以上」
 少なく勘定してもそのはずだ。
「こいつは」
 勘右衛門はおれにおれの携帯を突き付けた。受信メールの一覧画面。同じ名前だけが並んでいる。
「友達か?」
 全部斉藤タカ丸。
「幼馴染」
 と、言って問題はないだろう。幼い頃に知り合ったわけだし。
「他は」
「お前」
 もう一度、改めて勘右衛門に人差し指を突き付けた。
 これは否定されたら悲しい。
「おれはお前のメアド知らないよ」
「先週の頭に買ったばっかりなんだ。まだ使い方がよく判らない」
「転校初日だな」
 先週の頭のことだ。おれがここに戻ってきてから、既に十日近く経過している。何とか無事生き延びている。世間様に感謝。
「今時珍しい奴ね」
 言いながら、勘右衛門は自分の携帯を取り出し、おれの携帯と並べて何やら操作し始めた。
 何をやっているのか理解できないので、取り敢えず観察。
 両方の携帯の頭をカチンとぶつけた。外枠の隙間に、濃い赤紫のプラスチックが嵌め込んである辺りだ。
「赤外線通信?」
「そうよ。おれのアドレス入れてあげたからね」
「ふーん」
「殺人犯に遭遇したら真っ先にメールか電話かしてくれよ」
「警察の次にする」
 そりゃそうだ。と、勘右衛門は笑いながらも、おれの携帯をいじり続けている。
「この斉藤って奴は異常だ」
 メールを開き、中身を読む作業に移ったらしい。
「お前は一回も返信してないんだな。少なくとも今日は」
「結構寝てたからね」
「でも一方的にメールを送ってくる。間隔も異常に短い。内容は適当。あまりにもどうでもいい」
 知っている。一応、届いたメールには目を通している。
 身に危険が迫っているので助けて、とか来ていると困るので。


勘右衛門と久々知のどうでもいい会話シーンばかりが長くなる
軽い気持ちで書けるから

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「帰んないの?」
「悩んでる」
「何を? 帰るかどうか?」
 勘右衛門はおれの机の上に勝手にカバンを置いている。さっきおれの頭を殴ったのはこの薄いカバンの角だろう。
「友達から変なメールが来てて」
 おれは額の下に置いていた携帯を開いた。つまりさっきまで携帯を枕として使用していた。
 さっきまで寝ていたいおれが枕に使っていた携帯には、大量のメールが届いていた。
 さっきまで寝ていたので、一通も返信していない。返信していないにもかかわらず。
「見せて」
 勘右衛門は無遠慮におれの手から携帯を掠めとった。
 カチカチと音がする。携帯の中央部分の十字キーを操作する控えめな音だ。親指が動く様を見るに、恐らく、勘右衛門はおれが開いたメールの受信一覧をスクロールして眺めている。
 眉を顰めた。訝しげに。
 実感はないが、異常だろうとは思う。



ね 眠い
集中力を高める方法ってないですか

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「うん。依存性がある」
 おれは流石に頭を上げた。本当に勘右衛門はそこにいるだろうか、と不思議に思った。聴覚だけたった一つの情報なんて、ちょっと不安定じゃないか。
「まじで」
 勘右衛門は薄ら笑った。まあ、馬鹿な冗談を言い合っている空気なんだ。
 現状の、今の、この多幸感というのは、正にトラウマの逆発作って感じのやつだ。世界は美しく人類みな友達で世界平和を乱す相手は見つけ次第一列に並べてぶっ殺してやる。なんだってできるなんだって君のためならなんだってできる。
 鎮静剤が必要なほどの状態じゃない。医者のお墨付き。
 昔の、監禁から開放された直後は、この世の地獄から開放された反動で、何もかもが素晴らしく見えた。目も当てられないほどハイテンションな子供だったのではないだろうかと思う。そんな昔のこと覚えてない。
 塞ぎこむような子供ではなかった。とにかく何もかもが嬉しくて知りたかった。
 一応時間の経過とともに、それなりのお年ごろとして落ち着きを身に着けてはきたんだけど、まあ、たまにこういう発作はある。
 世の中素晴らしくって、どうしよう。



すごく今更なんですが
文章中で登場人物らが過去の事件の経緯を新聞で〜とかテレビで〜とかメディアで知ったって何度も言っていますが、
よくよく考えるとこの過去の事件は猟奇性の高さから報道規制がなされるレベルですね
何も考えずに書き進めていくうちにどんどん深刻な事態になっていくのはよくあること
清書するときに書きなおそう

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□九、熱血新米刑事のストーキング講座
 今更ながら気がついたことがあるんだけど。
 学校って楽しい。
「今日も元気に八時限中六睡眠。おはよう、兵助くん」
 飯も食える。
 本も読める。
 立派な服を着ていい。
 トイレにも行ける。
 とりとめのない会話が自由にできる。
 喋っていい。好きに喋っていい。
 親友のような感じの相手もできた。
 楽しい。
「目を開けて?」
「起きてはいる」
「さっき授業中殴られてたのに」
 そうだ、一つ前の社会の授業中、居眠りを咎められて教鞭で引っ叩かれた。
 全然痛くなかった。目は覚めた。
 さして痛くない。この程度でいいのか。非情に喜ばしい。
 教師は、「ちゃんとやれよ」と茶化すように言った。恐ろしくもない。嬉しかった。この程度でいいんじゃないか。相手に命令するっていうのも。これが普通のやり方なんだ。
「そしてまた寝る」
 さっきから鬱陶しい勘右衛門が、何かの角でおれの頭を叩いた。
 痛くない。
 そうだよな。痛くなくてもいいんだよ。こういう程度のやり取りっていうのが正常か。
 楽しい。
「どうしてそんなにいつも眠そうなの?」
 授業は全て終了しましたっていうのに、勘右衛門がしつこく絡んでくるのはいつもアレである。
 担任命令により面倒な経歴な上に実は不真面目だった転入生の世話を行なっているのと、自らが語っていた、野次馬根性。
 何度も言うけど。
 これも、おれは楽しい。
「今日はテンションが高い」
「は? お前が?」
 机に突っ伏したまま、おれは喋った。
「眠いのは長年の乱れきった生活リズムが訂正しきれていないからなんだけど」
「ほー」
「眠くてもテンションが高い」
「なんで」
「世紀の大発明をしたような気分」
 勘右衛門が首をかしげた。そりゃそうだ。おれのテンションが高い理由はおれにしか判らない。
「発作みたいなもん」
「ああ」
 何故か深く頷いた。
「そういう……アレ?」
「どれ?」
「お薬?」

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 ばたばたと足音を立てて、犯人はリビングを走りだした。けたたましい音を立てて、扉を開ける。廊下を走り回る。大人の足音。子供の足音。逃げる。額を床に貼り付けて、その足音を聞いている。
 あーちゃんの母親が、膨れた肉の切れ目から黒い目でおれを見ていた。同じ高さで視線が泳いでいた。だから目が合った。
 憎悪の篭った色をしていた。
 彼女の子供は、殺人鬼に追い掛け回されている。小さな手足で家中を逃げ回っている。足音が聞こえる。
 母親は憎悪の篭った目でおれを見ていた。
 今だからそう思うのだろう。本当の所なんてわからない。彼女はこの後、一言も発することなく間もなく死んだ。死因は刃渡り十五センチほど鋭利な刃物による刺殺だった。全身を十数箇所、えぐられていた。この数分後の出来事だ。だから彼女が、おれについて何を知っていたのか、判らないのだ。
 ただおれは、この母親から憎まれて当然だろうと思っている。
 おれは地面に落とした包丁を拾おうとした。迷っていた。あーちゃんの足音が聞こえた。
 包丁の柄に指が触れた。
 迷っていた。
 これをどう使えばいい?

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