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nannka nihongo ga nyuuryokudekinai
kono buroguno honnbunn dake dekinakunatta

tuduki ni kyou kaita bun

 彼女は彼女なりに、何かを成し遂げようとしている。
 別にそれはおれを貶めようとしているわけじゃないだろう。おれ――久々知兵助。この世におれの他に存在する同姓同名の久々知兵助に対してはどうだか知らない。
 根拠はある。まず、彼女の死体掘りはおれがこの町に発作的に戻ってくる前からの趣味だったようだ。
 それから、彼女はおれとの再開に非常に驚いていた。
 転校してきてすぐに。
 戻って来る前に、あーちゃんが現在どこに住んでいるかは調べがついていた。同じ学校の転入試験を受けた。小学校も中学校もまともに通わせられなかった割りには、進学校の途中入学に合格できる学力を身に着けていたのは父親の長年の教育の賜だが、特に感謝はしていない。
 登校初日から尾浜勘右衛門に絡まれ、世の中に出たからには自由に動くというのは困難だと改めて実感する。休み時間、昼休み、と一つ下の学年の教室へ行くタイミングを図っていたが、学級委員長の監視の目をかわせない。
 その日の最後の授業、化学が移動教室だった。
 授業を終えて、教室へ戻る途中の廊下。ほとんど沈みかけの夕日が、まぶしく、差し込む場所だった。
 数人の女子と楽しそうに話しながら、彼女があちらから歩いてきた。
 前など見ていなかった。おれの方は見ていなかった。
 記憶に相違がなければ、と思った。息を呑んで、真横でしゃべり続ける尾浜をシカトして、すれ違うその女子を慎重に、他の生徒に悟られないように、眺めた。
 垂直に、八十度、七十度、六十度、五十度、四十度、三十度、二十度。
 記憶の中にある横顔の映像と似ている。でもその映像は当然ながら九年前に見納めた切りのもので、その後の年月でどう変わっていくのか、という予測推測には自信が全くなかった。
 〇度、横目で彼女のうなじを眺める。髪が腰まで長い。こんなに長かった記憶は無いが、髪は時間の経過で伸びていくということは知っている。
 判らなかった。あーちゃんだったのか、よく似た赤の他人なのか。
 悩んだまま通り過ぎた。
「聞いてんの?」
 尾浜が呆れたようにおれの顔をのぞき込んだ。
 その時、背後から女子の声で、
「だって綾部は」
 と、聞こえた。

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