嘘つきへーくんと壊れた×× 2012.08.31 Fri 00:32 | 日記

　尾浜の発言ははっきりとした皮肉で、この女子らへの攻撃だった。一応、正義感の強い方。そして事件が大好き。
　あーちゃん、を取り囲んでいた女子が怯んで、各々顔を見合わせた。
　まるでいじめっていうか、差別してるみたいじゃん――と、そういことをバツの悪そうに呟きあっている。
　あーちゃん、はその中心で申し訳なさそうに笑って、首を振った。
　そしてすっとまっすぐにおれを見上げて、
「お名前、なんて言うんですか」
　と、言った。
　覚えてない――と。
　別にショックでも何でもない。本当に覚えていないとしても、白を切られているとしても。覚えていないはずがないけど。
「久々知兵助」
「久々知先輩」
「よく知ってるな、先輩だって」
　あーちゃん、は頷いた。
　意味のない皮肉だった。おれが二年に転入してきたことは、この学校の誰でもが知っていることだった。
「嘘を吐きました。覚えています。白状します。全部覚えています。あなたが、犯人です」
　と、彼女は嘘を吐いた。
　つまりおれは、知っているくせに、という言葉を飲み込んだのである。