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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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八、過去の作為の記憶の形成
 曖昧な記憶の話。
 曖昧な理由。まだ、幼い頃のことだったから。記憶の保持の仕方がまだはっきりと理解できていなかった頃のことだから。
 映像――音声――嗅覚――触覚――感覚の、言語化。
 記憶は後から言語化した過去の話。
 犯人は、被害者の少年に包丁を握らせた。それはどこにでも売っているような刃物だった。どこにでも売っていたのかどうかは知らなかったが、今、思い起こす記憶の中では、どこにでも売っている包丁なのだと決めつけられている。

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「覚えてる」
 あれがどれでも、おれは隅々まで覚えている。その後のことも、これからのことも、全部覚えている。おれは多分そういう役割が適任だ。
「あの日から」
 あーちゃんは可愛らしく小首を傾げ、上目遣いにおれを見上げた。やっぱり口元だけ笑っている。何も感じていないみたいな顔。かわいそうに。
「全部壊れたんです。壊れた瞬間、覚えてますか」
「壊れた瞬間」
 繰り返して、答えられずに口ごもった。
 壊れた瞬間。瞬間。瞬間?
 そんなもの、あっただろうか?
 いや、何度もあった。何度も繰り返し壊れた。
 今こうしてあーちゃんと向き合っていること。彼女が死体遺棄の現行犯だと知ったこと。彼女と再開したこと。制服を着て高校に行ってみたこと。この町に戻ってきたこと。退院したこと。父親と話し合ったこと。病院で治療を受けていたこと。警察と話をしたこと。入院したこと。沢山の大人に保護されたこと。警察に駆け込んだこと。一人で逃げ出したこと。犯人たちが殺されたこと。リビングに集められたこと。それから――それから以前の色々なこと。
 何もかもにぶち壊されて、また組み上げてきた。そういう風なものだと思っている。
 彼女は、おれとは考え方が違うらしい。
 条件も違う。多分。
 赤の他人なんだということぐらい、理解している。
 おれは彼女の次の言葉を待った。彼女もおれの言葉を待っていたけど、でもおれは答えられない。わからないから。
 じれったそうにあーちゃんは瞬きをした。
 ぎゅっと目を瞑って、唇もぎゅっと噛んで笑えなくなって、それから低い声で話し出した。
「ママが殺された時に、私は誓ったんです。復讐してやります。犯人に。だから」
「それで、あれを……」
 そして彼女はぎこちなく満面の笑みを作った。
「へーくんは、協力してくれるんですよね? じゃないとタダ飯食いですよ?」
 そういえば、とさっきの肉のことを思い出した。今日の夕飯……だめだ、肉、苦手だな……。


メタ的なあれってどのくらいやったら嫌われてしまうんでしょうか

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 目を閉じたまま、口元だけ笑った。
 これは犯罪者の顔です。間違いありません彼女はまともではありません思考が破綻しています。赤子のように自らの反社会的行動に対する罪悪感が全くなく良心が異常に欠如しています。
 そして彼女は真実、慢性的な嘘つきです。
 嘘つきだ。多分、彼女は。
 きちがいのフリなんてそう難しくもない。知っている。
 彼女は嘘をついている。のだ、と、おれは推測している。
 何故? 知りたい。
「あのね、あーちゃん。そういうことじゃなくて」
「方法? 理由?」
「理由。運んだ理由」
「刑事さんみたいですね」
 薄ら笑ったまま、あーちゃんは目を開けた。
「逮捕されます?」
「それは、嫌だな……」
「へへ。ありがとうございます」
 あーちゃんは立ち上がり、すっかり冷えたフライパンを机の上から取り上げた。
 重たい鉄の塊。一度焼けた肉。冷えた油の匂い。
 左手でソファの端を握りつぶした。
「一から十までお話します? いいえ、嫌です」
「あーちゃん」
「へーくん、あの日のこと、覚えてますか」
 あの日。あれ、と指しただけで頭に浮かぶこと。おれにとって重要な日。たくさんある。生まれた日、小学校に入った日、友達がたくさんできた日、誘拐された日、始めて××の××をした日、大事な友だちができた日、××から外れた日、犯人が××された日。
 おれは全部覚えている。その時の当事者の誰よりも、はっきりと覚えているという自信がある。

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「あーちゃん」
 三度目。
「はい」
「目」
「はい」
 両目を閉じた。
 唇を少し開いている。
 開いた隙間から呼吸が出入りしている。
 おれは彼女は不幸だと思う。おれもそう。本当の所の気持ち、を疑っている。自分のことも、他人のことも。
 言語化不可能な脳の内側にさえ嘘があると思っている。だれの脳の内側も不正確だと思っている。
 おれはそう。だから、彼女もそう。
「あーちゃん、目を閉じたまま答えてね」
 彼女が目を閉じた時、彼女は彼女の前にいる男が誰だか正しく認識することはできない。誰もそう。箱の中の猫は青酸ガスで死んだかどうか観測されない。
 誰にも観測されない、おれは誰だ?
「あれは、どうしてやったの?」
「あれ」
「さっきニュースでやってたあれ」
「足」
「そう」
「スコップで上からずどんと」
「は?」
「柔らかくなってました。スコップの尖った部分でずどんとしたらちぎれました」
「あーちゃん、そうじゃなくて」
「あの大きさじゃないと運べないです」


ところで今日諸事情があって20分ほどサイドステップをしていたんですが
やっているそばから太ももの外側とケツが筋肉痛になりました
日常生活ではサイドステップに使う筋肉は使用しないようです

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 頭の中がごちゃごちゃしている。
 あーちゃんが、ゆっくり目を閉じた。
 まだフライパンから肉の焼ける音が聞こえる。弱く油の跳ねる音。換気扇が回っている。やかましい。騒音。ゴミでも引っかかっているのか。テレビはもう次のニュースに移っている。男性アナウンサーのテンションの高い声。子供らの歓声。場面が切り替わる。その都度、とりどりの色がソファに写り込んでいる。ソファの傍らに彼女の通学カバンが放置されている。クリーム色のセーラー服。詰まった肉。エプロンに油の染み。手に汗が滲む。皮のソファの上を濡らして滑る。滑る手がソファの上にめり込む。その一端を爪を立てて握りつぶしている。賑やかな……騒音が……眩しい……色が……吹き出した……汗が……目の前の……肌色の……生きた……臭いの……。
 おれは彼女は不幸だと思う。

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