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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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 ばたばたと足音を立てて、犯人はリビングを走りだした。けたたましい音を立てて、扉を開ける。廊下を走り回る。大人の足音。子供の足音。逃げる。額を床に貼り付けて、その足音を聞いている。
 あーちゃんの母親が、膨れた肉の切れ目から黒い目でおれを見ていた。同じ高さで視線が泳いでいた。だから目が合った。
 憎悪の篭った色をしていた。
 彼女の子供は、殺人鬼に追い掛け回されている。小さな手足で家中を逃げ回っている。足音が聞こえる。
 母親は憎悪の篭った目でおれを見ていた。
 今だからそう思うのだろう。本当の所なんてわからない。彼女はこの後、一言も発することなく間もなく死んだ。死因は刃渡り十五センチほど鋭利な刃物による刺殺だった。全身を十数箇所、えぐられていた。この数分後の出来事だ。だから彼女が、おれについて何を知っていたのか、判らないのだ。
 ただおれは、この母親から憎まれて当然だろうと思っている。
 おれは地面に落とした包丁を拾おうとした。迷っていた。あーちゃんの足音が聞こえた。
 包丁の柄に指が触れた。
 迷っていた。
 これをどう使えばいい?

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 まあ、その時は、死んじゃいなかったので、どうでもいい人間ではなかった。従って、色々言いたいことがあったが、言葉がなかった。こいつと話が通じると思っていなかった。あらゆる意味で。
 その時、おれの考えていたのは三つ。
 これで、殺せるのか、と。
 これが、新しい遊びか、と。
 それから、殺さずに切り抜けるにはどうしたらいいか、と。
 おれは全く自分のことしか考えていない。この頃からずっとそうだ。
 犯人は動き出さないおれにものの数秒でしびれを切らし、包丁を握らせた手を、その上から掴んだ。体温の高い手のひらが、妙に優しく包み込んだ。こんなに滑稽なことはない。腹の中に耐え難いざわざわした感情が湧いていた。笑いを堪えるのに必死だった。訳もなく? 訳も判らず。
 今ならその可笑しさも説明できるけど。
「どうして」
 と、犯人は優しく耳元で囁いた。
「どうしてできないの?」
 と、優しく言う。
 おれはまだ犯人の顔を見上げていた。相変わらず言葉が出ない。こいつのために言葉を組み立てるのが億劫だった。
「使い方が判らない? 教えたはずでしょ? こうするの」
 と、優しい声で言った。それを聞き終わるよりも前に、左手の真ん中を、激しい熱さが貫いた。
 あ、と思った。血が飛び散った。痛くはなかった。熱かった。
 右手に握らされた包丁の先が、おれの左手の甲を貫いていた。犯人の手の平の内側の、痺れる程の強さで握られた、蒼白な左手の、内側の凶器が。
 耳をつんざくような幼い叫び声が鳴り響いた。
 おれじゃない。叫ぶほどは痛くはなかった。
 犯人は、血走った目をおれから背けた。悲鳴の方向を探した。
 おれは右手を押さえてうずくまった。痛くはない。ただ、痛い、と呻いた。嘘だった。これで犯人が興味をなくすだろうと思ったのだ。


これここの犯人は女性なんですけど、それはしばらく隠そうと思って曖昧に書いていたんですが
曖昧にする意味も特にないような気がしてきた
どうでもいいことを意味深で書いてるから話が進まない、と、そういう気がしてきた

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「裏切るって? おれが?」
「警察にタレコミやがりますと」
「何を」
「ん」
 あーちゃんは、ちょっと視線を外して考え込んだ。誘導尋問。下手くそだな、ぜんぜん偽装できてない。
「ご存知のようなあれです」
「明言を避ける。やましいところがあるからだ」
「それはもう」
「誰も知らないと思っている」
「いいえ、私は物覚えがいい方です。ご存じないかも?」
 あーちゃんは右の人差し指を、俺の喉元にぴっと突き立て、続けた。「たとえあなたの証言があったとしても」、と。
「現行犯にはなりませんが、探せばいくらでも証拠は出るでしょう。誰の犯行ですか? 私は、そんなにちゃんと始末をしていません。過去のスプリー・キラーのようには。燃やす場所もない。コンクリートや薬品は一女子高生には手に入れられない。お料理には」
 机の上のフライパンが目に入った。
 あーちゃんは笑っていた。
「食べちゃったら、人目につく所に遺棄できないです」
「そ、う」
 そうだな、と言おうとしたが、声が上手く出なかった。
 変に喉が渇いた。カラカラで、少し痛かった。
「ですので私の身柄はへーくんに託されているのです」
「通報するべきか、目をつむるべきか」
「ですです」
 どうしてそんなことを言うのかな、と、思った。おれが裏切ると思っているのかな。へーくんなのに。そうでないとしても。
「逮捕されたら私はおしまいです。なにもかも」
「わかってるよ」
「へーくんが思っている以上に、多分悪い結果になりますよ。きっと」
「わかってる」
「ん?」
 首を傾げた。
「何回も同じ事、言わなくたっていいだろう。わかってるんだ。おれは、それだけは嫌だ」
 それ、というのが、何を代替しているのか?
 広い範囲の考え得るあらゆる悲観。
 何かしらの救いを求めている。未来、なんとか平穏無事に過ごせればいいな、と。
 その反対側にあるあらゆるもの全てが、嫌だ。
 あーちゃんが、泣いたように、ぎゅっと目をつむった。すぐに開いた。笑った。
 再開して以降、始めて見たような顔をした。

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「刑事さんみたいですね」
 薄ら笑ったまま、あーちゃんは目を開けた。
「警察ごっこ」
「うん」
「警察はキライです」
「おれは、そうでもないかな」
「国家の犬」
「なくてはならないもの、だ」
「じゃあ、へーくんは巡査さん」
「うん」
「どうして……」
 少し、言葉を呑んだ。あーちゃんの閉じた唇の内側で、何かが押しつぶされて、飲み込まれた。その白い喉の内部へ。
「どうせ迷宮入りですね」
 自嘲のように聞こえた。これは過去のことか、今のことか。
 どっちも、全部迷宮入りの方が楽だけど。
「もしもですね、へーくん、へーくん巡査さんが私を裏切りますと」



もう順番バラバラ

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 おなかがすいていた。ぐったりとつかれているのに、ねむれなかった。
 おれは口を半分あけたまま、となりでよこ向きにたおれているあーちゃんの背中をながめていた。
 真っくらな中に、あーちゃんの白いはだがうきあがって見える。
 あーちゃんはさっきの最後のかっこうのまま、ゆかにほほをくっつけて動かない。うすいワンピースの布きれ一枚から、白い両足が生えている。
 あーちゃんは眠っている。きぜつしているのかもしれない。太ももをなんどもこすり合わせている。きっと眠っている。さっきの悲鳴が耳の後ろにきこえてくる。
 おれは立ち上がって、あーちゃんの顔の向いている方に、回りこんだ。
 あーちゃんはじっと目をつむっている。
 苦しそうに、はなと口とむねが動いている。
 おれはあーちゃんの顔にむかって手をのばした。
 おなかがすいていた。
 おいしそうだと思った。もちろん、人間は、食べ物じゃないけど。だから食べないけど。
 食べたらあいつはよろこぶんだろうな。さっきも、あーちゃんをいじめるように命令したあいつは、そのようすを見ながら、ほんとうに楽しそうに笑っていた。
 またあいつは笑っている気がする。笑っているこえがきこえる。
 いないのに。
 あの耳のおくへつきささるような笑い方がきらいだ。高い声で笑うのがこわい。



小学生の独白っぽくなってるでしょうか
もう小学校の頃何を考えてたかなんて思い出せないからどう書いていいかわからんです

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