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あまり時間がないのでここだけ更新しています。 その日書いた分をまとまりなく記事にしています。 ある程度まとまったらHTMLにする予定です。
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 確かに犯人殺しの犯人は、確かに別に存在する。
「おれの勘では……いいか、ただの勘だ。しかし長年の調査で洗い出した事実と、刑事としての経験に基づいた、勘だ。あの現場にはもう一人が存在した。第三者だ。女性二人を殺害し、姿をくらました誰かだ。そしてその誰かは、今も社会的制裁も受けずに、のうのうと生きている。そうなんだろう、久々知……し」
「あ」
 変な声が出た。
 反射的に立ち上がった。おれは結構、滑稽な顔をしていただろう。
 道路へ開いたガラス張りの壁、そのあちら側に父親とあーちゃんがいた。

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 映像として……感覚として……忘れられない光景だ。そもそも、おれは結構な記憶力の持ち主で、あまり物を忘れるということをしない。それでも記憶なんてものは、時間の経過で変化していくものなんだから、不安定なものだ。
 それに、その時の主観的記憶と客観的記録が脳内に同居している。

 被害者児童らは、犯人の遺体とともに犯人宅で発見された。現場では被害者女児の母親と見られる女性の遺体も発見された。現場では一連の犯行の凶器と見られる家庭用の出刃包丁も発見された。警察への通報を行ったのは被害者男児だった。事件発覚当初は現場に残された物的証拠から、殺害の容疑者は被害者男児のみに絞られていたが、後に容疑者本人、また同時に保護された別な被害者からの証言により、遺体で発見された女性らが激しい口論の末お互い刺し違える形で死亡していたことが明らかになった。また、一方の女性は発見された児童らを拉致監禁の上、長期間にわたって虐待していたことも明らかになった。云々。

 事件後読み漁った新聞記事の内容の方が、或いは実体験の記憶よりも仔細かもしれない。何しろ現実はたった一つたった一瞬が隙間なく並べられているだけだ。
「今でも、結局、不可解な点が多数残ったままになっている。犯人は死んだ、それで、それ以上の追求は不可能ということになったが……。そのせいか、世間では当初の見解通り、お前が真犯人ではないかと、今でも噂されている」
 男がゆっくりと言葉を区切る。おれの出方を探っている。
 おれは何も言わなかった。何もしなかった。じっと男の眉間の間中から視線を逸らさずにいた。
 と、しながらも、頭の中で大きく頷いた。
 不可解で当然だ。嘘だから。
 あーちゃんの母親が犯人と刺し違えたというのは、当時のおれが警察で苦し紛れにでっち上げただけの、嘘。

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「いつも勘違いされることなんですが、別に、おれはそんなに過去のことは気にしてないんです。まあ、でも、そう表現すると嘘になるんですけど。でも昔のことで何を言われても傷ついたりはしませんよ。あれは別におれの責任じゃないし。だからご自由に無神経なことでも侮辱的なことでも言ってみたらいいんじゃないですか」
 早口に、皮肉・自虐・挑発。拗ねた十代の若者みたいじゃないか。間違っちゃいない。嘘も言っていない。
 それを言い終わるまで、この警察官はおれの顔をじっと睨んでいた。単に喋っている人間の顔を見て聞いていただけかも知れないが。睨んでいるように思えたのは、何となく敵意のようなものを感じているからだろう。おれが。片想いに敵意を。だいたい今のおれには警察という存在が脅威だ。
「悪い話じゃない。警察はいつでも被害者の味方だ」と、当たり前の建前を宣言した。「だからおれは、最大の被害者であるお前が、殺人犯であるかのように世間に扱われていることが許せないんだ」
 言葉をそこに置いて、男は静かに深く息を吸い、吐き出した。
 過去の話。来年で十年が経過する。いつもそればかり持ち出されるが、記録の他にはもう何も残っていない。
「事件が発覚した経緯は周知の通り、被害者少年自らによる通報だった」
 と、男は言った。
 それからまた口を噤んた。おれがその時の情景を、不確定な記憶を頼りに脳髄に蘇らせるだけの時間を待っていた。
 忘れられない光景だ。そもそも、おれは結構な記憶力の持ち主で、あまり物を忘れるということをしない。それでも人の記憶というものは、時間の経過で変化していってしまうものだと理解している。

 ちょうど全ての思惑が片付いてから、警察が犯人宅へ突入してきた。
 全身が暗い色をした大きな人間がやってきた、と思った。これはその時の感じたままの感想。
 彼らはつまり警察というやつだった。いたいけな少年少女の人生が全部手遅れになってから、やっと助けに来たのだ。
 とはいえ、その時のおれにはその存在に関する知識はあっても、実際にお世話になったことがなかったので、玄関から窓から顔を並べて覗き込んでいる知らない顔に対して、どう反応すべきか判らずに立ち尽くしたままだった。
 助けを呼ぶでもなく。リビングには全身滅多刺しにされた女性二人の死体、気絶した痣だらけの少女。
 茫然自失と立ち尽くしていたのは、おれだけじゃなかった。駆けつけた善良な他人の警察官たちも、異様な光景に息を呑んで全身を強張らせていた。
 当初の容疑者はおれ一人だった。
 無理もない。その事件現場においておれは比較的軽傷で、意識をはっきり保っていた。おれの足元にはひと目で凶器と判る出刃包丁が転がっていた。おれの指紋も検出された。
 しかしおれも含めた生き残りの被害者は、事件直後はただただ呆然として、まともな証言は得られなかった。


Dropboxって便利だ

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「きれいに」
 詰まった声で、男が繰り返した。いかにも苦しげに、全く他人事の痛ましさを眉間に寄せ集めて。
 しょうがないだろう、別に。おれは思った通りに喋るし、感情のままに顔に出る。今のおれの言葉と顔つきが全く冷淡で無表情に見えたとしても、それはそういうことなんだ。
「いつも勘違いされることなんですが、別に、おれはそんなに過去のことは気にしてないんです。まあ、でも、そう表現すると嘘になるんですけど」



この話で今のところ登場する予定の上級生は久々知、尾浜、綾部、タカ丸、伊作、食満のみです
あと兵太夫と、どこかで新野先生出るかも
数えてみると狭い世界の話ですねなんか
小平太とか出てきたら鬱クラッシャー

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「よかった」
 真実、そう思った。
 男は首をひねり、解せないと言いたげにおれを眺めていた。
「いいんですか、未成年なのに」
 と、勘右衛門。
「どこでどんな生活を送ろうが、個人の自由ではある。犯罪さえ起こさなければ」
「それにしちゃ物々しい」
 男は一度目を閉じた。俯き、目を開いた。それで、テーブルの上のホットコーヒーを思い出したらしい。生暖かい湯気が少し残ったカップの口を手で塞いだ。意味のない行為。
「個人的にずっと追っている事件がある」
 と、出し抜けに口を割った。
 なるほど、と思う。先が読めた。
「今回の件はある意味幸運だった。お前が遺体の第一発見者になったということが。いや、犠牲者が出ているのに不謹慎な話だとは判っているが……でも、こうでもないと終わった事件を突き回ることはできない」
「おれがあの殺人に関わっていると?」
「いや! いや、いや……どうだろうな。それはお前が一番知っていることじゃないか。第一、あれの真相は直に明らかになるだろう。現場には多くの証拠が残されていた。それはいいんだ。良くはないが、まだ風化していない情報が残っているからな。おれが知りたいのはその前だ。およそ十年前の……どうせ言わなくても判っているんだろう。無神経と思うか? しかしお前の、今後の人生のためにも、また他の被害者、犠牲者のためにも、絶対に解決しなければならないと思っている」
「あれはきれいに解決しましたよ。おれの目の前で」


これを書くために警察用語とか過去の事例とかを調べようとして色々ググると
しばしば恐ろしげな怪文書とか悲惨な事件の顛末とかが引っかかって
ヒエッとなる
深夜に嫌だよね

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